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古着を「育てる」:買った瞬間から始まる世界に一つの物語

古着 育てる

「古着を育てる」って、なんだか不思議な言葉に聞こえますよね。

正直、昔の僕も服は「カッコいい」とか「面白い」と思って選んでいました。
でも、買った瞬間が満足のピークで、そこから一着の服とじっくり付き合って関係を深めていく、という発想がなかったんです。

そんな僕の服との向き合い方を変えたのが、ある一本のデニムとの出会いでした。

 

ある一本のデニムとの出会い

アパレルショップで働いていた頃、先輩が自分のデニムジャケットやデニムパンツの色落ちを本当に楽しそうに語るんです。

時間をかけて一着の服を変化させていく。そんな自分にはなかった服の楽しみ方に強く興味を惹かれ、「自分も試してみたい」と思ったのが、硬くて黒に近い紺色の「Levi's501」のデニムを手にしたきっかけでした。

最初はただの好奇心からでしたが、穿き込むうちに色落ちやヒゲ(脚の付け根にできる猫のひげのような色落ち)が少しずつ変わっていくのを眺めているうちに、気づけばそれはただのモノじゃなく、大切な「相棒」になっていました。

「これ、俺が育てたんだ」

そう思える一着は、小さな誇りであり、自分らしさを感じる瞬間でした。

ちなみに、この写真が僕の「相棒」である「Levi's501」のデニムです。

fading denim

このデニムは、自分だけのヒゲやアタリ(生地の折り目や縫い目などが擦れて白っぽく色落ちすること)をくっきり出したくて、一度も洗濯せずに穿き込みました。
普段の手入れは、裏返しにして天日干しすることで殺菌・消臭し、たまにファブリーズで香りをつけるくらい。日光で生地が色褪せないように、干すときは必ず裏返すのが僕なりのこだわりでした。

こうやって見ると、膝の色落ちやヒゲの部分に、自分の生活の歴史が刻まれているのが分かりますよね。特に面白いのが、右ポケットのあたり。長方形に色褪せているのは、当時使っていたスマホを入れていた跡なんです。

この跡を見たとき、ふと思いました。

例えば2080年になって、誰かがこのデニムを古着として手に入れたとします。その人は、この四角い跡を見て「これはスマホが全盛期だった頃のデニムじゃないか?」「持ち主は右ポケットにスマホを入れる人だったんだな」なんて想像してくれるかもしれない。

これこそが、服に刻まれる『歴史』なんだと思うんです。

そのとき、もう一つ大きな発見がありました。

新品の服を育てるのがこれだけ面白いなら、誰かが育てた歴史がすでにある古着は、もっと面白いんじゃないかって。

古着は、買った瞬間が終わりじゃない。誰かからバトンを受け取って、そこから自分の物語を重ねていく。そんな“育てる”楽しみが始まるんだと気づいたのです。

 

古着と“対話”するということ

新品を育てるのが「ゼロから物語を描く」ことなら、古着を育てるのは「誰かの物語の続きを描く」ようなもの。すでにある歴史の上に、どうやって自分の“今”を重ねていくか。

それはまるで、服と“対話”するような時間だと僕は思っています。

まずは、とにかく着てみること。デニムやレザージャケットを毎日のように着ることで、前の持ち主が作った味に、自分のシワやアタリが加わっていきます。

洗濯や保管の仕方も重要な対話の1つ。先ほどの僕のデニムのように、あえて洗わずにコントラストの強い色落ちを目指すのも一つの方法です。一方で、洗濯を繰り返すことで全体的に青みがかった、やさしい表情に育てていくのも面白いでしょう。

どう歴史を上書きしていくか、その選択自体が「自分のスタイル」になるんです。

 

さらに手を加えて、世界に一つの「作品」へ

時間をかけて自分の歴史を刻み込んだら、もし傷や穴ができても、今度はそれを個性として活かしていきましょう。そうやってさらに手を加えることで、服は世界に一つの「作品」に昇華します。

具体的なステップとしては、以下のようなものがあります。

■リペア(修繕する)
まずは、ほつれたり破れたりした部分を修理して、長く着られる状態に戻すこと。目立たない糸で丁寧に縫うだけでも、服への愛着はぐっと深まります。

■リメイク(作り変える)
次に、そのリペア跡などを活かして自分らしいデザインを加えてみる。あえてカラフルな糸で穴を塞いだり、思い出の生地を上から縫い付けてみるのも素敵な方法です。そうやって服の歴史に自分のアイデアを重ねることで、世界に一つだけのデザインが生まれるんです。

■カスタム(自分色に染める)
さらに大胆に、自分で染め直したり、型紙を服の上に置き、その上から布用のスプレーを吹き付けて好きな文字や絵柄を入れるのもおすすめです。少し勇気はいるけれど、その分「誰とも被らない一着」になるはずです。

 

“育てる”ことで手に入る、お金で買えない価値

服に手をかけるという行為は、見た目の変化だけでなく、僕たちの心をお金では買えない豊かさで満たしてくれます。
ここでは、“育てる”ことで得られる特別な価値について、もう少し深掘りしてみましょう。

 

流行に流されない“自分だけの定番”が生まれる

手間をかけて育てた服は、トレンドに左右されない特別な存在になってくれます。自分の時間と愛情が注がれた一着は、袖を通すたびに安心感を与えてくれるからです。

だからこそ、それは「誰かにとっての正解」じゃなく、「自分にとって本当に心地いい服」になる。

そんな軸ができると、日々の洋服選びも暮らしもずっと自由になるんです。

 

記憶が刻まれ、もっと好きになる

着ているうちにできたシワや色落ちには、自分だけの物語が詰まっています。

古着なら、そこに前の持ち主の時間も重なっている。

「このダメージは誰が作ったんだろう」と過去に思いを馳せる楽しさと、「この服を着てあそこへ行ったな」と未来の思い出が増えていく喜び。

その両方が、同じ一着の上に重なっていくんです。
そうやって関係が深まった一着は、多少ほつれても穴が空いても「捨てる」という選択肢にはなりません。

むしろ「どう直そうか」と考える時間さえも楽しくなり、「もっと好きになる」道筋が見えてくる。そんなふうに一着と長く付き合えるのは、ひとつの贅沢であり、かけがえのない時間ではないでしょうか。

 

長く着ることは、自分を大事にすること

ここまで読んで、あなたのクローゼットの中に「これから育ててみたい一着」は浮かんだでしょうか。デニムでもレザーでも、Tシャツでも構いません。クローゼットに眠っているその一着に、今度はあなたが手をかけることで、きっと特別な存在になります。

「服を育てる」のは少し面倒に思えるかもしれません。しかし、その手間こそが面白さであり、ただ着て終わりではない、自分の手で変えていく喜びに繋がるのです。

それはきっと、ファッションという枠を超え、自分自身の時間を慈しむことにもつながっていくでしょう。

そうやって一着の服に自分の選択や時間を重ねていく。手間ひまをかけてモノと丁寧に向き合う時間は、そのまま自分自身と向き合い、慈しむ時間にもなるからです。

だからこそ、「長く着ることは、自分を大事にすること」に繋がるのだと、僕は思うのです。

さあ、次の休日はクローゼットを開けて、育てたい一着を探してみませんか?

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かめたく

ファッションとプロレスをこよなく愛する元アパレル店員。独自理論に基づいた着こなし術や人気ファッションアイテムの体験記。また、マニアックな視点から捉えたプロレスの魅力をお伝えします。

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