プロレス界最大のイベント、1.4東京ドーム「レッスルキングダム」のメインイベントは、46分45秒という東京ドームでのプロレス史上最長の試合時間で、オカダ・カズチカがとんでもない粘りを見せたケニー・オメガを渾身のレインメーカーで沈め、IWGPヘビー級王座を防衛した。
涙する観衆
この日、東京ドームに詰め掛けたのは26,192人の大観衆。
この2人の戦いは試合時間が経過するにつれ、観衆の雰囲気は今までにない空気に包まれていた。
何人ものファンが泣きながら試合をみていたのである。応援している選手が負けて悲しいあまり泣くという姿は今までもあったが、戦いそのものをみて泣くというのは、少なくとも僕が新日本プロレスを見始めた99年以降初めてのことである。
「背負ってるものが違う」という差
ファンが涙した要因は2つあるように思う。
1つ目はケニーの底知れぬ強さ。
2つ目は、今オカダが「背負っているもの」である。
レインメーカーとして凱旋帰国してからのオカダは、クールさを全面に出していたこともあり、その振る舞いはまるで感情の無いロボットのようで、ファンからしたら感情移入がしにくい選手であった。
しかし、あれから6年が経ち、東京ドームという大きな会場で観客と喜怒哀楽を共にできる選手に成長したのである。
去年まで6年連続で東京ドームのメインを務めてきた棚橋弘至がいなくても、大会を締めた今のオカダは立派なIWGPヘビー級王者である。
試合中、ケニーの凄さに対してオカダが動揺した表情を見せた場面があった。
それは試合時間が30分を超え、勝負に出たオカダはツームストンパイルドライバーからの正調レインメーカーを決めたが、カウント2で返されてしまう。
この時に浮かべた「信じられない…」という呆然とした表情と次の技に行けないオカダから、どれほどケニーという挑戦者が強いのかが物語っていた。
オカダの、この必殺フルコースを返されたのはおそらくこれが初めてである。
そこからゾンビのように這い上がってラッシュをかけてくるケニー。
40分を超えてからは、どちらかと言えばケニーが優勢だった。
しかし、最後の最後でチャンスをものにしたのが、オカダが言う「背負ってるものが違う」という差だったのかもしれない。
アントニア猪木が提唱していた「闘魂」
全てを出し切ってもなおゾンビのように戦うケニーと、「背負ってるもの」が垣間見えたオカダが交わった時、目には見えない時空を超えた戦いがそこでは確かに行われていた。
それは見ている者の感情に訴えかけるものであったことには間違いない。
これこそ新日本プロレス創立者のアントニア猪木が提唱していた「闘魂」であるように僕は思う。
【次回予告】
次回は、鈴木軍の新日本カムバックについて話していきます。