2000年以降、化学の進歩によって冬物衣料は、天然繊維から化学繊維への転換が加速しました。
化学繊維でつくられた冬物衣料は、安価で薄く軽量、そして保温性が優れている万能アイテムです。
多くの人にその気づきを与えたのが、ユニクロから販売されているヒートテックになります。
現在、ヒートテックは合成繊維でつくられている代表的な冬物衣料です。
しかし、そんなヒートテックにもいくつか問題点が挙げられます。
それは、「かゆくなる」「じっとしていると暖かくない」「暑くなりすぎる」「静電気」です。
「かゆくなる」問題については「ヒートテックを着るとかゆくなる?その原因と対策方法を紹介」、「じっとしていると暖かくない」問題については「ヒートテックが暖かくない?そう感じる人の特徴と代わりのインナーを紹介」、「暑くなりすぎる」問題については「冬なのにヒートテックが暑い!極度に暑くなる原因と対策等を解説」でお伝えしました。
今回は、ヒートテックの「静電気」問題とその対策方法についてお伝えしたいと思います。
静電気のメカニズム
まずは、静電気のメカニズムについて説明していきます。
金属・繊維などの物質や、人・動物などの生物には、全て電気が帯びています。
その電気は、プラスとマイナスの2種類に分けられます。
通常時、物質・生物に帯びている電気は、プラスとマイナスの数が均等です。
ですが、電気はマイナスからプラスに流れる性質を持っています。
そのため、2つの物質・生物が接触すると、ある一方が持っているマイナスの電気が、もう一方に流れるのです。
そのことを放電と呼びます。
放電により、物質・生物に帯びている電気は、プラスとマイナスの数が不均等になります。
マイナスの電気を多く帯びている物質・生物は、俗に「マイナスに帯電している」といいます。
対して、プラスの電気を多く帯びている物質・生物は、「プラスに帯電している」といいます。
人の身体は、プラスに帯電しやすい性質を持っています。
極度にプラスに帯電している状態で、マイナスに帯電している物質・生物に接触すると、大きく傾いたプラスとマイナスのバランスを取り戻すために大きな放電が起きます。
すると、「バチッ」と音を立てて痛みを感じます。
それを、いわゆる「静電気」と呼んでいるのです。
静電気は、接触だけでなく摩擦や剥離でも発生します。
帯電しやすい物質・繊維
物質や繊維などの帯電しやすさを「マイナスに帯電しやすい」「帯電しづらい」「プラスに帯電しやすい」の3つに分類したのが、上の画像です。
近い位置にあるもの同士は放電が起こりづらく、離れていると放電が起きやすくなります。
みなさんは子供の頃、下敷きを頭にこすって、髪の毛を逆立たせる遊びをした経験はないでしょうか?
下敷きは、上の画像では最もマイナスに帯電しやすい「ポリ塩化ビニル」でつくられています。
対して、髪の毛は上の画像では最もプラスに帯電しやすい「人毛・毛皮」に該当します。
つまり、下敷きと髪の毛は放電が起きやすい関係なのです。
下敷きで髪の毛が逆立つ現象は、放電を起こそうと磁石のS極・N極のように引き合った結果と考えられています。
ヒートテックの着用で静電気が発生しやすい理由
ヒートテックの着用で静電気が発生しやすくなる理由は、プラスとマイナスどちらにも帯電しやすい化学繊維が多く使用されているためです。
ヒートテックの生地には、以下4つの化学繊維が使用されています。
・ポリエステル
・レーヨン
・アクリル
・ポリウレタン
前出の画像に基づくと、プラスに帯電しやすい性質を持っているのがレーヨンです。
対して、マイナスに帯電しやすい性質を持っているのが、ポリエステルとアクリル、ポリウレタンの3つです。
ヒートテックには静電気の防止加工が施されています。
そのため、ヒートテック単体では静電気は発生しづらいでしょう。
とはいえ、ヒートテックがマイナスに帯電しやすい化学繊維などでつくられているのに対し、人はプラスに帯電しやすい性質を持っています。
着用すれば、ヒートテックと人の間で生じる摩擦によって、放電が起こります。
そのため、ヒートテックを着ると静電気が発生しやすいのです。
人との間だけでなく、ヒートテックの上に重ね着する衣類によっても静電気は発生します。
それは、ヒートテックがプラスとマイナスどちらにも帯電しやすい化学繊維でつくられている以上、それと同様の衣類を重ね着すると放電が起きるためです。
つまり、ヒートテックの着用そのものが、静電気を発生させやすい状態にしているのです。
ヒートテックの静電気を防止する対策方法
では、ヒートテックによる静電気から逃れることはできないのでしょうか。
実は、回避する方法があります。
前述の通り、人はプラスに帯電しやすい性質を持っています。
ですので、極度にプラスに帯電している状態をつくらないことが大きな放電を回避し、静電気の防止に繋がります。
ここからは、極度にプラスに帯電している状態をつくらないことを中心にした、ヒートテックの静電気を防止する対策方法をお伝えします。
【対策①】プラスに帯電しやすい物質に触る
プラスに帯電しやすい物質に触ると、極度にプラスに帯電している状態が緩和され静電気の防止に繋がります。
というのも、極度にプラスに帯電している状態でプラスに帯電しやすい物質に触ると、小さな放電が行われます。
すると、「極度にプラスに帯電している状態」から「プラスに帯電している状態」に変化します。
「プラスに帯電している状態」であれば、マイナスに帯電している物質・生物に触れても大きな放電が行われるケースは軽減できます。
つまり、静電気の防止に繋がるのです。
プラスに帯電しやすい身近な物質は、壁や木製家具、革財布などが挙げられます。
僕は、冬にドアを開ける際、壁あるいはドアの木製部分に触れてから、ドアノブを握ります。
それを行うだけで、静電気の回数は劇的に軽減されます。
また、極度にプラスに帯電するのは、大きな摩擦が起こる衣類の脱いだ直後です。
ですので、衣類を脱いだ後、壁は木製の家具を触るのも静電気防止のコツになります。
【対策②】柔軟剤を使って洗濯する
多くの人は柔軟剤を使って洗濯しているかもしれませんが、実はそれも静電気の防止対策になります。
柔軟剤の「ファーファ」で知られるNSファーファ・ジャパンによると、『柔軟剤を使った後は、繊維の表面を柔軟成分がコーティングしている状態です。これにより、繊維がなめらかになって、摩擦が減り静電気も起きにくくなります』だそうです。
柔軟剤によっては、下記のアイテムのように静電気の防止を強みにしているアイテムもあります。
柔軟剤で静電気を防止できるのであれば、コスパはいいのではないでしょうか。
1000円ポッキリ 送料無料 P&G レノア 超消臭 1WEEK 静電気ブロック リラックスフローラルの香り 洗濯洗剤 本体 530mL 洗濯洗剤 柔軟剤 液体 静電気 消臭効果 抗菌
【対策③】湿度50%以上を維持する
加湿器の利用などで湿度50%以上を維持することも静電気の防止対策になります。
それを行うと、常に小さな放電が行われ、静電気が発生しづらくなるためです。
水は、『大小の部分に分かれるとき,小さい方が負に帯電する傾向がある』ようです。
画像引用元:静電気除去.com
一定の湿度が保たれている空間では、生物や物質の表面にはマイナスに帯電している無数の水の粒が常に触れています。
つまり、湿度が保たれていると、身体が極度にプラスに帯電したとしても、無数の水の粒によって常に小さな放電が行われるのです。
それにより、大きな放電が起こらず、静電気の防止に繋がります。
僕の経験上、静電気が発生しづらくなるのは湿度50%以上です。
ただし、60%以上になるとジメジメします。
ですので、理想の湿度は50〜60%と考えられます。
【対策④】衣類に静電気防止スプレーを吹きかける
即効性を求めるのであれば、静電気防止スプレーを衣類に吹きかけるのが便利です。
静電気防止スプレーは、一般的に水と界面活性剤が原料になっています。
それらが霧状になって放出されるため、マイナスに帯電した水分が噴射されます。
そのため、静電気防止スプレーを使用すると小さな放電が行われ、静電気の防止に繋がるのです。
有名な静電気防止スプレーに、「エレガード」が挙げられます。
「エレガード」は、スーパーやドラッグストアなどでも販売されています。
僕も静電気で悩まされている時、「エレガード」を使っていた時期があります。
脱ぎ着する際に起こる衣類同士のバチバチが軽減され、静電気の防止に繋がったことを実感した記憶があります。
ライオン エレガード 小サイズ 75ml (静電気防止スプレー)( 4903301370260 )
【対策⑤】肌を保湿する
『乾燥肌の方は静電気が起こりやすい体質ともいわれ』ています。
ですので、肌を保湿して乾燥を防ぐことで静電気の防止を期待できるでしょう。
例えば、ヒートテックを着用する前に、擦れやすい脇腹やスネを中心に保湿クリームを塗ると、静電気の発生を軽減できる可能性があります。
ニベアクリーム大缶などの保湿クリームなどを利用すれば、コスパよく静電気対策ができるのではないでしょうか。
【対策⑥】静電気除去ブレスレッドを身に着ける
静電気除去ブレスレットを身につけるのも一手です。
静電気除去ブレスレットには、銅などの帯電しづらいものが編み込まれているケースが多いです。
そのようなものを身につけると、極度のプラスに帯電しても常に小さな放電が行われるため、静電気の発生を軽減させる効果が期待できます。
おすすめの静電気除去ブレスレットは、下記の「SガードFita」です。
「導電繊維」という、銅を使った特殊な繊維が編み込まれています。
見た目もおしゃれで、静電気の防止も期待できるので一石二鳥のアイテムです。
【対策⑦】ヒートテックの上にコットン素材の衣類を重ね着する
ヒートテックの上にコットン素材の衣類を重ね着することも静電気の防止に繋がります。
既述していますが、ヒートテックは静電気の防止加工が施されているため、それ単体では静電気は発生しづらいです。
しかし、ヒートテックの上に重ね着する衣類との組み合わせによって静電気が発生します。
それは、ヒートテックと重ね着した衣類との間で摩擦が起きるためです。
ヒートテックの生地は、マイナスに帯電しやすいポリエステル、アクリル、ポリウレタンと、プラスに帯電しやすいレーヨンの4種類の繊維が混紡されています。
そのため、プラスに帯電しやすい、あるいはマイナスに帯電しやすい繊維でつくられた衣類を重ね着すると摩擦によって放電が起こります。
すると、何かのタイミングで大きな放電が起こり、静電気に繋がる可能性があるのです。
化学繊維で作られた衣類は、プラスあるいはマイナスに帯電しやすい繊維で作られているケースが多いため避けたほうがいいです。
そこでおすすめなのが、人と同様、プラスに帯電にしやすいコットンやシルクでつくられた衣類です。
コットン素材のTシャツ・シャツ、シルクシャツなどをヒートテックの上に重ね着すると静電気発生の軽減に繋がります。
普段、僕もヒートテックの上に、ユニクロのコットン素材のTシャツを重ね着しています。
ですが、まれにそれを挟まずにウール素材でつくられたセーターやニットを重ね着する場合もあります。
そのような場合に限って、普段より静電気の発生が多いことを実感しています。
僕は、ヒートテックの上にGUから販売されている「インナーVネックT(半袖)」を着ています。
インナー用のアイテムなので生地は薄いですが、静電気発生の軽減を実感できています。
2枚で990円なので、コスパがよくておすすめです。
【関連記事】Tシャツの上にヒートテックを重ね着すると効果激減!?正しく着る順番とは
【対策⑧】コットンでつくられた冬用インナーに代える
ヒートテックではない他の冬用インナーに代えるのも静電気の防止対策になります。
ヒートテック以外にも、様々な会社から冬用インナーが販売されています。
それらの中から選ぶ際、プラスに帯電しやすいコットンでつくられた冬用インナーをチョイスするのがポイントです。
コットンでつくられた冬用インナーは、主に以下の3種類があります。
・コットン100%
・肌面のみコットン
・コットンと化学繊維の混紡
静電気の防止が最も発揮されるのは、コットン100%の冬用インナーです。
とはいえ、肌面のみコットンのタイプや、コットンと化学繊維の混紡タイプでも静電気の軽減は期待できます。
それぞれの種類でおすすめする冬用インナーは、次の通りです。
ヒートテックの極暖シリーズからも、それらに当たる種類があるので併せて紹介します。
種類 | おすすめの冬用インナー |
コットン100% | ・無印良品の「あったか綿インナー(メンズ・レディース)」 ・グンゼの「ダブルホット(メンズ)」 ・グンゼの「HOT-ON COTTON クルーネックロングスリーブシャツ(メンズ)」 ・グンゼの「ホットマジック ふっくらコットン100%(レディース)」 |
肌面のみコットン | ・セシールの「肌側綿100%あったか男の中わたキルト長袖クルーネック(メンズ)」 ・ユニクロの「ヒートテックコットンクルーネックT(極暖・9分袖)(メンズ)」 ・ユニクロの「ヒートテックコットンクルーネックT(極暖・長袖)(レディース)」 |
コットンと化学繊維の混紡 | ・ベルメゾンの「ホットコット 綿混あったかインナー(メンズ・レディース)」 |
終わりに
静電気が酷いと、それを恐れて何かと物に触れるのが怖くなります。
僕も、静電気の発生を恐れるあまり、エレベーターのボタンを押す際は、直接手で触れるのでなくスマホの角で押したりしていたものです。
静電気は、思いのほかストレスを感じます。
しかし、静電気の正体を知れば、対策は可能です。
ヒートテックを着用する際は、少しでも大きな放電が起きないようにするのがコツです。
そのためには、極度にプラスに帯電している状態をつくらないことが静電気の発生を大きく左右します。
本記事では、ヒートテックの静電気を防止する対策方法を8つ紹介しました。
実際に僕も、その中から複数の対策を実践しています。
それを行うことで劇的に静電気の発生が軽減され、以前より冬を快適に過ごすことができています。
静電気にお悩みの方には、ぜひ本記事で紹介した対策方法を実践してみてほしいです。
きっと、今より快適に冬を過ごすことができます。